ホーム クローズアップ 「海洋散骨プロデュース珊瑚礁」合同散骨乗船レポート

クローズアップ 「海洋散骨プロデュース珊瑚礁」合同散骨乗船レポート

ここのところ曇ったり冷たい雨が降ったりですっきりしない日が続いていましたが、今日は朝からすっきりと晴れわたっています。絶好の散骨日和(?)です。11月中旬の横浜みなとみらい、ぷかり桟橋から出航する海洋散骨プロデュース珊瑚礁(今井 健夫代表/コーディネーター)の合同散骨へ同乗させていただきました。ぷかり桟橋出航、合同散骨への同乗ともに初めての経験で、私にとっても印象深い散骨・海洋葬となりました。

乗船前に船の前で写真撮影

出航時間15分前、すでにご遺族4家族がそろっていました。珊瑚礁の散骨・海洋葬が2回目というY家、町田市在住のM家、小さいお孫さんを連れたI家、先日委託散骨をおこなってメモリアルクルーズに来られたTさん、皆さん明るく笑顔でこの時を迎えています。以前とある散骨施行会社の方から聞いた「散骨は明るくおこなうもの。」という言葉をまた思い出しました。本当に散骨は笑顔が合っていると思います。今井さんがご葬家1家族ごとに挨拶と事前の確認をおこなっていました。こういう場面で予め健康状態などを確認しているのでしょうか。皆さんひとりひとりと念入りに話をしています。

ぷかり桟橋にはシーバスやほかの船舶も停泊するので施設内の待合室は多くの人でにぎわっています。こういった広いスペースがある桟橋は合同散骨にちょうど良いと思いました。

出航時間になり、今井さんの誘導で全員が船に向かいます。そのまま乗船するのではなく船の前で家族ごとに写真撮影をおこないます。I家のお孫さんは船に乗ることをとても楽しみにしていたようで、写真撮影に照れながらもとても嬉しそうです。写真を撮り終えた家族から順番に乗船します。ぷかり桟橋は高さがあり、今回のような中型クルーザーでも乗船時は階段を下るような感じになります。船のクルーや今井さん、スタッフで手を取って慎重に全員を乗船させます。

航行中の話と船酔い防止

船の中は大きなテーブルを挟んで10人がゆったり座れそうな横長の座席があり、今回の海洋葬には十分な船室の広さです。4家族が左右に分かれて着席し、今井さんがトイレの場所など船内の案内と船酔い防止のアドバイスをおこないます。その間に船は出航して徐々に速度を上げていき、みなとみらい地区が小さくなっていきます。

今井さんは散骨ポイントへ到着するまで4家族の中心に位置するテーブルの前に立って散骨をおこなった有名人の話や横浜港の話などを続けています。話を聞いているご家族はそれぞれに、これから故人を横浜の海に還すということをあらためて感じているようでした。話の内容もさることながら、けっこう揺れている船室内でバランスよくずっと立って話をされている今井さんを見ているとさすが以前船会社に勤めていた「船のプロ」だけあると感心してしまいました。

散骨ポイントを目指す船の後部デッキではスタッフの女性が献花用の花かごの準備をしています。今回は合同散骨なので用意するかごも花びらも多く、鮮度を保つために収めていた袋から花びらを取り出す作業もいそがしそうです。その間も船室では今井さんがずっとご家族の皆さまに話をしています。バランスを崩さず立ったままで・・・。

あとで今井さんから聞いた話ですが「今回使用した船のようにアフターデッキが狭いタイプの船の場合、どうしても船室にいる時間が長くなるので自分がずっと話をするようにしている。話をすることでご家族が船の揺れに対して気がまぎれて酔いにくくなる。」といっていました。これも船酔い防止のテクニックということです。

いよいよ合同散骨、とそこに「気持ちがわるいよぉ」という声が・・・。

船の速度が落ちてきました。散骨ポイントに近づいたようです。今日の横浜港は日差しがやさしくキラキラと輝いています。ご家族の皆さまは粉骨した遺骨を入れた水溶性の紙袋に思い思いのメッセージを書いています。合同散骨では故人のプライバシーに触れることになるためこの場では差し控えるとのことでしたが、個別散骨のとき、今井さんはここで粉骨前の故人のご遺骨の状態を細かく語り、ご葬家が涙することも少なくないようです。故人に対する遺族の思いが伝わってくるエピソードです。

メッセージを書き終えたらいよいよ散骨式です。珊瑚礁の合同散骨は1度にまとめての散骨式ではなく、1家族ごとに船室から後部デッキに出て個別散骨と同様に散骨をおこないます。

・・・そこで突然「気持ちがわるいよぉ」という涙声が。乗船前は元気だったI家のお孫さんが船に酔ったようです。いままでずっと我慢していたんですね。可哀想ですが陸地ははるか遠く、どうしようもありません。女性スタッフがお母さんとお孫さんに付き添って風に当たりにデッキへ移動します。迅速な対応でこれ以上酔いがひどくならないよう対策をとります。散骨は船が好きな人だけがおこなうものではなく、乗り物に酔いやすい人も乗るわけですから常にこういった事態も想定しているのでしょう。対応がとてもスムーズなのが印象的でした。

家族がそれぞれの想いを胸にお花とお酒で故人を見送る散骨式

船酔いのアクシデントはありましたが3組の散骨式と1組の供養は滞りなく執り行われました。散骨、献花、献酒をおこなうこの時ばかりは故人との別れを惜しむ哀しみに包まれます。

珊瑚礁での散骨・海洋葬は2度目というY家は施主の奥様と2人姉妹で乗船しました。散骨・海洋葬の施行に珊瑚礁を選んだ理由は葬儀社からの紹介があったからということでした。I家も葬儀社からの紹介で、インターネットで調べて決めたのはM家で息子さんが珊瑚礁を見つけて申し込んだそうです。やはり亡くなった直後からお世話になっている葬儀社の紹介は安心できるのでしょう。インターネットはサイトの内容を自己責任で判断せざるを得ないのでご年配の施主様には難しいかもしれません。あらためて正確な情報と価格以外の価値を伝えることができる情報サイトの必要性を感じました。

散骨式を終えたご家族に船室で簡単なインタビューをさせていただきました。町田市からきたM家に樹木葬ではなく海洋散骨にしたのはなぜかと質問したところ、樹木葬墓地は場所が遠く、お参りが大変だから。それに比べ散骨・海洋葬は横浜で場所も良く立地もお参りに来るだけの場所ではないので、故人と一緒に横浜という街を楽しむことができるので海洋散骨に決めたということでした。
たしかに樹木葬墓地は郊外に多く、お墓参りに行く以外に目的がないので足遠くなる可能性はあるかも知れません。お墓の後継者問題を解決する手段として注目を浴びてきている樹木葬ですが、遺族にとってはメリットばかりではないのですね。
また今回散骨式を施行した3家族は葬儀から約3か月での散骨で、数年を経てお墓から遺骨を取り出しての散骨ではなく、葬儀からの流れで散骨をおこなう遺族が多くなってきていることも興味深い話でした。

「さようなら」ではなく「いってらっしゃい」という気持ちで

散骨が終了すると、船はぷかり桟橋を目指して速度を上げます。帰りの船室では、今井さんが散骨後の供養について話をします。散骨式の前、祈りの対象はお墓でも海でもなく遺族一人ひとりの心の中にあるということ、海へ散骨するのは故人との永遠の別れではなく、自分の心の中でまた会うことができる。だから「さようなら」ではなく「いってらっしゃい」という気持ちで送ってほしいとお話をしていました。たった今散骨式を終えたご家族にもう一度その言葉の意味を気持ちを込めて説いています。

故人を悼む供養の方法はまさに人それぞれだと思いますが、広い海原へ遺骨を散骨するという行為に対して、祈りの対象や心のよりどころを失ってしまう方も少なくありません。こうやって散骨後に供養の話をすることで、ご遺族の皆さまが気持ちを新たに日々過ごしていく手助けになっているのだと感じました。

桟橋について下船したご家族は、今井さんとスタッフに挨拶をしてそれぞれ笑顔で帰っていきました。途中で船酔いをしてしまったI家のお孫さんも、陸に上がるとすっかり元気になっていました。女性スタッフが「これで船に乗るのが嫌いにならければいいけれど。」と最後まで気遣っていたことが温かく心に残りました。


珊瑚礁はこの日、個別散骨も1件施行するということでお礼も手短になってしまいましたが、今回の合同散骨への参加はとても貴重な経験になりました。今井社長およびスタッフの皆さまにあらためて御礼申し上げます。

帰り際にメモリアルクルーズで来ていたTさんから新聞記事のコピーをいただきました。そこには「真摯に人生を生き切ることが死後に遺せる最大の財産だ。」という内容のコラムが書かれていました。今井さんの人間性に惹かれて今回のクルーズに参加したとおっしゃっていたTさんも、今井さんの話に共感して心のよりどころを持てた方の一人なのだろうと感じました。

ご協力いただいた散骨施行業者

海洋散骨プロデュース珊瑚礁
葬儀業界10 年、マリーナの支配人を経て「海の素晴らしさ・恐さ」をよく知る社長が経営する「納得」「安心」「満足」の海洋散骨専門の会社です。
海洋散骨プロデュース珊瑚礁詳細ページへ
ホーム クローズアップ 「海洋散骨プロデュース珊瑚礁」合同散骨乗船レポート

Pick up