ホーム クローズアップ 分骨という新しいかたちの海洋葬「海の弔(とむら)い」

クローズアップ 分骨という新しいかたちの海洋葬「海の弔(とむら)い」

妙海寺の光輪塔

千葉県の勝浦市にある正榮山妙海寺にやってきました。ここで新しく始まった海洋葬「海の弔(とむら)い」について、佐々木 教道(ささき きょうどう)住職にお話を伺いました。写真は海洋葬で海へ旅立った方の供養塔「光輪塔(こうりんとう)」です。お寺の境内で最も見晴らしの良い太平洋を望む場所に建っています。この地下に分骨室があります。

地域とお寺・お墓の今後を考えて...

妙海寺の佐々木住職

妙海寺は室町時代から続く由緒あるお寺です。第40代住職の佐々木さんは「より良く生きることを叶えるお寺」を目指し、カフェやランチ会、婚活イベントなど「お寺」という場所を活用した様々な活動に取り組んでいます。

妙海寺の境内 妙海寺を空から撮影

海洋葬「海の弔い」は、これまで行ってきた地域住民のつながりや暮らしと健康を考える取り組みの延長線上にあるものとして、お墓の継承問題の解決と、地域とお寺の持続化に向けて、2020年にスタートしました。

手を尽くして供養をしたいという方のための海洋葬

img45_05.jpg

海の弔いの大きな特徴は、故人の遺骨を分骨して永代供養するという点です。

遺骨を海に撒いたらそれでおしまい。あとに続く供養や分骨は必要ない。遺骨を全て撒いてくれればそれでいいんだよ。という方には他社のサービスがたくさんあります。本当は手を尽くして供養をしたいけど、どうしてもそれができない。という方にぜひ海の弔いを利用してもらいたいです。

と話す佐々木さん。お寺として故人や遺族と関わり続けたい、つながりを持っていたいという思いが、分骨というシステムに込められています。

太平洋・房総沖に散骨 光輪塔地下の分骨室

これまでの海洋散骨サービスは、すべての遺骨を散骨する、もしくは分骨して手元供養を行うという内容がほとんどです。遺骨の一部を地下の分骨室に収め、地上から海を見渡す「光輪塔」(供養塔)に手を合わせるという「海の弔い」は、これまでにない新しいかたちの海洋葬と言えるでしょう。

永代供養墓「結の廟(ゆいのやしろ)」と「海の弔い」

永代供養墓「結の廟(ゆいのやしろ)」

光輪塔の向かいには、同じ時期に建立した永代供養墓「結の廟(ゆいのやしろ)」があります。海に浮かぶ船をデザインした香炉が、海と生きるお寺にマッチしています。「結の廟」と「海の弔い」は、最初にかかる利用料以外に年間の管理費(結の廟:7,000円、海の弔い:3,000円が必要になります。

もちろん施設の維持管理に使用するためのものですが、佐々木さんの一番の目的は、お寺とつながりを持つことで、「弔う」ということをもう一度考えてもらいたい、ということでした。佐々木さんは「弔う」ということの大切さをこのように話してくださいました。

供養とは、半分は残された方のもの。人と人のつながりが簡素化されていくなか、「弔う」という、生きている方と亡くなられた方が人生に納得するための行いが、どれだけ大切なことなのかを改めて問いかけていきたい。

ライトアップされた結の廟 夕日に映える光輪塔

管理者が途絶えてしまったからと言って、妙海寺での供養が終わるわけではありません。結の廟では年会費の支払いが無くなってから七回忌(満6年)で区画を開放して分骨、海洋散骨と光輪塔地下の分骨室へ納骨されます。その後も妙海寺が続く限り供養が行われます。

地域とつながるお寺だからできること

海の弔いの落慶式

海洋散骨を行う上で大切なことの一つに「周辺環境への配慮」があります。佐々木さんはその点においても十分な準備を重ねていました。海洋散骨の事業者団体、一般社団法人日本海洋散骨協会のガイドライン順守を基本に、行政や漁業関係者、お寺の檀家の皆さんへ事前の相談を行い、一定の理解を得ることができました。

海の弔いはまだ始まったばかり。まずは安全と安心をきちんと作る。そのうえでひとつずつ実績を重ねて信頼を築いていかなくてはならない。

と話す佐々木さん。海の弔いの落慶式(完成お披露目の式典)には多くの支援者、関係者が集まりました。ここまで地域の理解を得ることができたのは、妙海寺が地域とつながるお寺だから。これまで開かれたお寺として様々な活動をしてきたことと、何よりも佐々木さんの人柄によるものだと思います。

人と関わり続ける海洋葬

完成間近の光輪塔

妙海寺は、地域住民の「集いの場」として、生前から関わりのある方を中心に末永くお寺とつながりを持ってもらえる方を対象に、海洋葬を行っています。「手厚く供養してあげたいけどできない」という方にぜひご利用いただきたいです。

佐々木さんは、遺骨を預かって海へ散骨した後に関わりが無くなってしまうのではなく、故人やご家族と関わり続けることを願っています。「海の弔い」は、人と関わり続ける海洋葬として、海洋散骨に新しい価値を生み出しています。


海と生きるお寺として何百年も続いてきた妙海寺で誕生した、海洋散骨を中心とした永代供養「海の弔(とむら)い」と「結の廟(ゆいのやしろ)」。海洋葬を希望する方にとって、お寺とともに末永く供養するという新しい選択肢ができたことは、大きな意義があると思いました。今後に注目していきたいです。

妙海寺 海洋葬「海の弔い」ホームページ

 
ホーム クローズアップ 分骨という新しいかたちの海洋葬「海の弔(とむら)い」

Pick up